黄と紫の和風な提灯にかぼちゃのオブジェ。城下を歩けば陽気な音楽と太鼓や鉦の音。ふるまい酒についつい手が伸びて、路上に並べられたテーブルにはお菓子や骨つき肉に山盛りソーセージなどのごちそうが並びます。
ハロウィンと秋祭りとオクトーバーフェストをごちゃ混ぜにした、カオスな大騒ぎが続く黄昏空のエルフの里ですが、エルフ族の長兄たるオルティスが何やらご機嫌ななめの様子です。
「良く似合うよー、ジャスティン」
「そうかなあ、アレクシス姉ちゃん」
「ジャスティンは姉想いの良い子だもん。さっきからむくれてるけど、オルティス兄さまだって最高だよ? しっかり衣装映えして鍾季がここ数年構想を温めただけあるわ」
「ハロウィン装束とうとう着せられちゃったもんだから拗ねてるんだよねー。いい加減諦めなよ」
「やかましいわ、レア様たってのお頼みとあって仕方がなく袖を通したにすぎぬ」
「あら、ステキじゃない。私も短いスカート穿いたんだから、たまにはオルティス兄さまも冒険しなきゃ」
「ルシリアもどういう風の吹き回しだ」
「お酒の振る舞いやる以上、監督の立場でイベント参加する必要があるのと、ヴァルターが珍しく乗り気なんで何だか面白かったのがひとつかな」
「警備隊がわけわからんものを佩刀しているが、あれは誰の趣向だ?」
「お祭りなんだから盛り上げましょうとレア様がおっしゃったのを受けて、ヴァルターがアレクシスの協力を仰いだ結果ですって」
「見た目お菓子みたいだけど、れっきとした鎚だから当たると痛いからね。威力を知りたいなら止めはしないけどさ、オルティス兄さま」
「こらアレクシス、私が真っ先に問題を起こすみたいに言うでない」
「まだまだ全然呑み足りないみたいだからねえ。ルシリア姉さま、もっとオルティス兄ちゃんにふるまってやってよ」
「麦酒に葡萄酒に清酒、もちろん蜂蜜酒もふんだんに酒蔵から持ってきたから、どんどん行きましょう。私もつきあうわよ、時間はたっぷりあるから」
「あー、盛り上がるのは結構だが兄上もルシリア姉上も自重してくれ。地のふたりに暴れられるとこちらも手に余る」
「いいのか、ヴァルター」
「レア様のご命令とあってはな。お断りする理由などあるまい」

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