寿命のない上位種族たちは基本的に無宗教なのですが、そんな住民が集うエルフの里にも教会はあります。
倉庫だった建物の窓にあざやかなステンドグラスをはめ込み、祭壇や会堂を整えると荘厳な空間に変身。最初は訪れる者もまばらで閑古鳥が鳴いていた教会ですが、近ごろは礼拝時になるとどこからともなく住民が集まってくるようになりました。
「信者が増えたのも当然、天使で聖女たる私の威厳に打たれてよねえ」
「あーん? 今月の豊穣の祭りのために教会で用意したとっておきの葡萄酒、味見と称してひと樽分飲み干して二日酔いでひっくり返ってて、本日から礼拝にご復帰のルイザ司祭殿がなーに寝言ほざいているのかな?」
「そ、それは農園の葡萄酒がとっても美味しかったからに決まってるじゃない、シスター・アイリス! ルシリア様からも今年の新酒は豊かな味わいでここ数年で最高とのお言葉をもらったわよ。それに、一緒に味見につきあって下さったのオルティス様だし」
「どおりでオルティス様も、昨日は姿をお見せにならなかったのよお」
「……なんでそこで私を巻き込むのかね、れむルカ」
「と、とにかく、アイリスやA子は悪魔だけれど信心深ければ救われるし、ヤコたち神社勢がいなくても私たちのチームワークで今回のお祭りは成功間違いないってこと!」
「言っちゃあなんだけどルイザ、あんた天使といってもとうの昔に堕天済みだし、種族的には私らと同類なんだけど?」
「あのう、ふたりともそろそろ祈祷に戻りませんこと? 信者たちに大うけなのはいいとして、いったい何度目の脱線だと思ってるのかしら」
「そ、そうよねシスター・A子のいうとおり、続きの祈りを捧げましょう」
「ねえねえシグレお姉ちゃん、とっても楽しいね!」
「だろう? 木蓮。 掛け合い話も面白いし訓練後のクールダウンにはちょうどいい」
(さて、れむルカ。そろそろ次のヤコの神社に向かうぞ。プラータの様子も気にかかるからな……)
「あらあ、名残惜しいけど途中退席ですわよお」

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